楽喜舎日録

2013年1月から始めた「楽喜舎」(らっきしゃ)の日録。日々の暮らしからみえてくるものを発信します。日々実践!

農山村の再生方法

先日の話ではあるが、3月13日に、シンポジウム「ゆるがぬ暮らしを地域から」http://70.ruralnet.or.jp/?p=183に参加してきた。農文協の甲斐さんからのお誘いがあり、また私淑する結城登美雄さんの講演があったからだ。結城さんの話を聞くと、いつも感極まってしまう。人間の情に訴えながらも、朴訥でかつ論理的に迫ってくる講演は胸にしっかりと刻み込まれる。
今回は、もうひと方、明治大学の小田切徳美先生の話もあった。大学の世界から政治に働きかけ、農山村再生のための政策に提言をしている方だ。

農山村再生  「限界集落」問題を超えて (岩波ブックレット)

農山村再生 「限界集落」問題を超えて (岩波ブックレット)

という著書もある。(買っただけでまだ読めていないのだが)
備忘的に、小田切先生のレジュメを転記する。


地域再生の体系化
①「参加の場」をつくる地域づくり(「場」づくり)
⇒新しいコミュニティの構築→「手づくり自治区」の構築
②「カネとその循環」をつくる地域づくり(「条件」づくり)
⇒新しい経済を起こす→「4つの経済」の創造
③「暮らしのものさし」をつくる地域づくり(「主体」づくり)
⇒当事者意識を掘り起こす→「地元学」運動


●「手づくり自治区」
・「手づくり自治区」とは
住民が当事者意識を持って、地域の仲間とともに手づくりで自らの未来を切り開く活動
・手づくり自治区の特徴
①総合性(文字通り「小さな自治」「小さな役場」)
②二面性=自治組織+経済組織(共同売店、ガソリンスタンド、居酒屋、特産品開発など)
③補完性=集落←<補完>→手づくり自治区
集落・町内会=「守り」の自治(地域資源保全)←→手づくり自治区=「攻め」の自治
→集落と手づくり自治区の重層的組織の構築が課題(集落・町内会の代替組織ではない)
④革新性(集落の「1戸1票制」の限界を意識し、「新たな仕組み」の構築を企図)
・その機能(旧高宮町川根地域振興会からのモデル化)
①安全に暮らす(地域防災)
②楽しく暮らす(イベント)
③安心して暮らす(地域福祉)/快適に暮らす(景観形成、農地保全)
④豊かに暮らす(コミュニティ・ビジネス機能:付加価値と雇用)
⑤誇りを持って暮らす(地域の自立)


●「4つの経済」の創造
・4つの経済とは
①6次産業型経済
・6次産業:国内食用農水産物(12兆円)と最終食料消費額(80兆円)のギャップにある付加価値と、雇用を農山村で獲得
・その本格化としての「農村レストラン」(直売所から直売所+農村レストランへ)
②交流産業型経済
・所得形成機会であると同時に双方の人間的成長機会(社会教育的側面)
→高い「リピーター率」→産業としての成立可能性も高い
地域資源保全型経済(共感形成型産業)
・「地域資源活用」から「地域資源保全」(資源保全+資源磨き+資源活用)へ
→こうした産業に都市住民の「共感」が集中(地域資源保全→物語→共感)
④小さな経済
・意外と小さな住民の追加所得要望
→年間60万〜120万円の追加所得形成機会(小さな経済)の構築
・小さな産業の蓄積の上に「中程度の産業」(若者定住)が成立する(コーディネーター)


このレジュメに、重要なことは尽くされている。
しかも、さらに重要なことは、上記のことは全国ですでに実践されている活動をポイントを押さえて概念化したものであるということだ。


今実は、国会では農業・農村・食料基本法を新たに定めようとしていて、6次産業化を推進する法案をどのように作ろうかと議論しているのだが、すでに上記では、交流産業型経済、地域資源保全型経済、小さな経済と新しい概念が提出されている。
私が前職で行っていた活動もこれに近いのだが、問題は本当に「小さな経済」であることだ(苦笑)。
これの解決が今後の大きな課題となる。


「手づくり自治区」という概念は、私が今廃校となった旧大山小でやろうとしていることがほぼ言い表されているように思う。
従来の集落を補完するものとして、地域コミュニティ再生の核、拠点としての廃校という考えなのである。


週末には、大山交流サロンと題して、旧大山小でイベントが行われる。
鴨川でも、小さいが新しい動きが始まっている。
全国で起こり始めている動きと同様に。