楽喜舎日録

2013年1月から始めた「楽喜舎」(らっきしゃ)の日録。日々の暮らしからみえてくるものを発信します。日々実践!

自分の鶴嘴で掘り当てよ!

図書館に行ったら、「日本の名著」 というシリーズ本があって、

何気なく夏目漱石と森鷗外のタイトルがついている本を手に取った。

本書に納められている夏目漱石の、

「私の個人主義」という学習院における講演録は、

前から話には聞いていたので、そのまま読み進めてみた。

ロンドン留学時、自分が何をすべきかわからず懊悩していたとき、

書物を読む意味すらわからなくなってしまったそうだ。

「このとき私ははじめて文学とはどんなものであるか、

その概念を根本的に自分で作り上げるよりほかに、

私を救う途はないのだと悟ったのです。

今まではまったく他人本位で、根のない浮き草のように

そこいらをでたらめに漂っていたから、駄目であったということに

ようやく気がついたのです。」

「私はそれから文芸に対する自己の立脚地を堅めるため、

堅めるというより、新しく建設するために、

文芸とはまったく縁のない書物を読み始めました。

一口で言うと、自己本位という四字をようやく考えて、

その自己本位を立証するために、科学的な研究やら

哲学的の思索に耽りだしたのであります。」

「私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから

大変強くなりました。彼ら何者ぞやと気概がでました。

今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、

この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたのは

じつにこの自己本位の四字なのであります。」

「(もしすでに自力で切り開いた道を持っている方は例外ですが)

もしそうでないなら、どうしても、一つ自分の鶴嘴で掘り当てるところまで

進んでいかなくってはいけないでしょう。」

「私のようなつまらないものでも、自分で自分が道をつけつつ

進みえたという自覚があれば、あなたがたから見てその道が

いかにくだらないにせよ、それはあなた方の批評と観察で、

私には寸毫の損害がないのです。私自身はそれで満足するつもりであります。」

以前にも書いたが、ある瞬間に出会うべくして出会ってしまう本がある。

ずっと前からこの本を知っていたのに、今日やっと手に取ったのだから。

漱石に比肩すべくもないが、私自身、最近どうすればよいのかわからなくて、しんどかった。

でも、漱石ですらこんなに悩んでいたんなら、今の私が通っている状況も

いつか晴れる日が来るのかもしれない、と思うのだ。

残念ながら、「自己本位」という言葉をまだよく理解できていないが、

自分もとことんまで掘り進めて行こう、という決意を持つことができた。

自分なりの言葉も、見つけられるかもしれない。

ちなみに、「個人主義」という言葉の意味についても、

国家主義」と対比しながら興味深く書いてある。

こちらについては、また書く機会があれば書いてみたい。

「日本の名著」シリーズは最近手に入れづらいので、

もし興味のある方は、こちら

私の個人主義ほか (中公クラシックス)

私の個人主義ほか (中公クラシックス)

を読むのがいいと思います。

版元は同じなので、テキストも同じはずです。

(ただし、未確認です。)